こねるパンとこねないパンの違いは、グルテンをどう作るか、です。パンをこねることでグルテンができるまでの時間が短縮できます。グルテンは捏ねなくてもできるんです。
ここでは、グルテンのできる仕組みを確認し、こねないパンの仕組みについて考えていきます。
簡単にできるこねないパン
簡単にできる捏ねないパン、私もすっかりはまって毎日のように焼いています。
そこで気になるのが「なぜこねなくてもパンができるのか」ということです。ですが、ちょっと待ってください。そもそも、パン生地をこねる理由は何でしょうか?
グルテンができる仕組み
まず、小麦粉の中にはタンパク質が多く含まれています。そのタンパク質の中でも量が多いのが、グルテニンとグリアジンです。そして、グルテニンとグリアジンが水と結合すると、グルテンになります。このグルテンは、パンの骨格を作るのに欠かせません。
捏ねなくてもグルテンはできる
グルテンは、グルテニンとグリアジンが水と結合するとできます。そうです。グルテンを作るだけなら、こねる必要はありません。
例えば、流しに落とした小麦粉が、しばらくしたら粘り気のあるかたまりになっていたりします。これは、グルテニンとグリアジンが水と結合し、グルテンができたということです。
つまり、パン生地をこねるのは、グルテンを作るため、ではないわけです。
生地をこねると時間節約
こねなくてもグルテンはできるのに、なんでこねるのか。それは、早くパンを焼くためです。つまり、より短い時間でグルテンを作ったり、より短い時間でグルテン同士をつなげたりするためです。
短時間でグルテンを作る
こねないパンのレシピのように、小麦粉と水をざっくり混ぜるだけでも、グルテンはできます。しかし、この方法だと、水の分子が動き回って、小麦粉と出会い、グルテンを作るのをのんびり待たないといけません。
それに対して、小麦粉と水をしっかり混ぜるとどうでしょうか。生地を捏ねてあげると、水と小麦粉が短時間でまんべんなく出会うことができます。つまり、グルテンができるまでの時間が短くなるのです。
短時間でグルテンをつなげる
グルテニンとグリアジンが水と出会うと、グルテンができます。この段階では、グルテンの粒がひものようにつながっただけの状態です。
グルテンを含む生地をこねると、このグルテンのひもが折りたたまれたり、ひも同士が出会ってつながったりします。そうすると、グルテンのひもが平面の網目に、平面の網目が立体の網目になっていくわけです。
時間をかけてのんびり待てば、この立体の網目もそのうちできるのですが、生地をこねれば時間短縮になる、というわけです。
生地をこねると発酵も早くすむ
発酵は、パンに欠かせません。イーストが作りだす二酸化炭素がグルテンの網目の間に溜まり、パン生地が膨らみます。このおかげで、パンのふわふわとした食感ができるわけです。
こねた生地は準備万端
パン生地をこねると、グルテンの立体の網目がしっかり出来上がります。いつ発酵が始まっても大丈夫です。なので、小麦粉100gあたり2-3gのドライイーストを加えて、1-2時間程度でたくさん二酸化炭素を発生させます。こねることで、グルテンをしっかり形成し、一気に発酵させることができるわけです。
こねない生地は準備が必要
それに対して、生地をこねていない場合、グルテンの立体の網目ができるのを待たなければいけません。どれくらい待つか、というと、大体室温で半日くらいです。
そこに、パン生地をこねるときと同じ量のイーストを入れたらどうなるでしょうか。最初から盛んに二酸化炭素を出しても、それを受け止める網目がありません。それだけでなく、長時間イーストを働かせると、生地が酸性になることでパン生地の酸味がきつくなり、グルテンも形成されにくくなります。
なので、イーストの量を控えめにして、ゆっくりと発酵させます。じっくり時間をかけてグルテンの網目を作り、少量のイーストを使って、のんびりと二酸化炭素を出していきます。大体、小麦粉300gに対してドライイースト1g程度です。
捏ねるパンと捏ねないパンの違い
こねるパンでは、グルテンの網目構造が素早くできます。そのおかげで、短時間で発酵させ、パン生地を膨らませることができます。
それに対して、こねないパンでは、パン生地をこねません。そのため、グルテンの網目構造ができるのに時間がかかります。結果として、発酵ものんびりとしないといけません。
私たちは、パンをこねて作るのが当たり前だと思っています。じゃあなんでこねるの、ということを考えてあげると、こねないパンの原理についても、しっかり理解することができます。