日本と海外のだし汁の作り方や成分の違いについて、以前の記事で確認しました。
それでは、だし汁はだしの素や味の素で代用はできるのでしょうか?どんな風に使い分けをしたらいいんでしょう?実験を通して考えてみました。
だし汁 vs だしの素 vs 味の素
早速実験を開始します。まずは、だし汁、だしの素水溶液、味の素水溶液をそれぞれ100mL用意しました。
だし汁はこちらのレシピです。
だしの素水溶液は、お湯150mLに小さじ1/3を溶かしたものを使います。
味の素水溶液は、だしの素の成分から濃度を概算して用意しました。
色、におい、味の違い
それぞれの色、におい、味の違いを比較しました。
だし汁 | だしの素 | 味の素 | |
色 | 澄んだ黄金色 | 少し茶色がかった透明 | 無色透明 |
におい | 一番強い | 二番目に強い | においなし |
味(私の主観) | 一番おいしい |
実は、この時点で一番おいしいと感じるのはだしの素水溶液でした。その理由は成分にあります。
だしの素には食塩、砂糖が含まれていて、お湯に溶くだけで味付けされただし汁になります。つまり、すでに完成された味なのです。逆に言えば、料理にだしの素を使うと、食塩と砂糖も一緒に加わる、ということです。
味噌を入れたらどうなる?
そしてここにお味噌を投入しました。一般的なレシピにしたがって、大さじ1ずつ加えました。
お味噌を入れてしまうと、見た目だけでだし汁、だしの素、味の素の判別はほぼできません。時間が経って味噌が沈殿してくると、だし汁では色が濃くなりましたが、だしの素と味の素の見た目は全く一緒といえるレベルでした。
実際に食べてみた
さて実食です。判定員は私とユハニです。ユハニには材料は伝えず、それぞれについてどう思うかを聞きました。
まず、味の素の味噌汁。味噌のいい香りがします。味は、生みそタイプのインスタント味噌汁に近いような気がしますが、十分おいしいです。ユハニ曰く、ちょっと味がぼやけているとのこと。
次に、だしの素の味噌汁。味噌のいい香りと、かすかにかつおぶしの香りがする。味の素の味噌汁よりおいしいです。ユハニ曰く、一番おいしい。
最後に、だし汁の味噌汁。味噌の香りとかつおぶしの香りが合わさって、私の慣れ親しんだ味噌汁はこれだ!という香りです。味は、かつおぶしの味が強い。ユハニ曰く、おいしいけど、魚のにおいが強い、とのこと。
わかめを入れたらどうなる?
この時点ではだしの素に軍配が上がっていました。ですが、だし汁に味噌だけ溶いて味噌汁と呼ぶことはまずありません。ここに、乾燥わかめを、それぞれに500mgずつ加え、食べてみました。
わかめの味が入ってくると、味の素とだしの素の味噌汁を区別するのはなかなか難しくなります。味の素のほうが、塩味が鋭いかな?くらいです。
ユハニにも試食してもらったところ、あわせだしのお味噌汁はすごくおいしい、他の二つは、うーん、だしの素のほうが、なんか、おいしいかな?程度でした。
ここに豆腐を加えたら?味の強いにんじんや、香りの強いねぎを加えたら?食卓に味噌汁を出されたとき、私たちは「今日はだしの素じゃなくて、味の素使ったね?」と判断できるんでしょうか?
それぞれの使い分け
さて、実験から分かった、だし汁、だしの素と味の素の使い分けをまとめます。
だしの香りが強い料理=だし汁
例えば、おすいもの、すまし汁、だし巻き卵、茶わん蒸しなど、だしの香りをメインで楽しむ料理や、だし以外の味付けが非常に薄い料理にはだし汁が必要です。だしの素で代用することももちろんできますが、香りがかなり弱くなるので、物足りなく感じる可能性が高いです。
だし香りもする料理=だし汁、だしの素
例えば、親子丼、肉じゃが、しょうゆの香りが強いけれども、確かにだしの香りもする料理。この場合は、だし汁、だしの素どちらでも使えます。
うま味だけ足したい料理=味の素
例えば、漬物、チャーハンなど、だしの香りはしなくていいけれど、うま味を足したい場合に活躍するのが味の素です。味の素はうま味だけを足す調味料なので、だしやだし汁の代わりというよりも、別の調味料として考えた方がいいでしょう。 浅漬けには味の素がぴったりです。
賢く使い分けを
海外にいると、昆布やかつおぶしはかなり高価です。毎食だしをとれるほど余裕のない私は、上記のように考えて使い分けをしています。
ちなみに、自分でとっただしは天然のものだから体にいいとか、だしの素や味の素は化学調味料だから体によくないとか、そんなことはありません。化学調味料だから?化学調味料という名称が使われるようになった流れは、味の素のHPに詳しく書かれています。
味の素はサトウキビのしぼり汁を発酵、精製して作っています。仮にこの工程が化学的だから、体に悪いというのなら、しょうゆだって味噌だってさとうだって、何でも身体に悪いことになります。
化学、科学という言葉が苦手なことはわかります。私も、語学とか、宗教とか、思想とか言われると脳みそがパンクします。だけど、それは相手を否定する理由にはなりません。わからないけれど受け入れる、というのも大切だと思います。