梅酒や果実酒が漬かる仕組み-1 浸透と半透膜の働き

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手軽に作れる梅酒や果実酒。その仕組みを理解すると、失敗知らずで、よりおいしい梅酒が作れます。キーワードは浸透と半透膜です。

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登場人物は果実、酒、砂糖

梅酒や果実酒の作り方はごくシンプルです。丁寧に洗った果実、氷砂糖、アルコールを、清潔な瓶に入れて熟成させる、これだけです。

梅酒や果実酒のお話に登場するのは果実、酒、砂糖の3つだけです。そして、梅酒が漬かる物語は全三部構成です。

第一部 果実と酒の出会い

梅酒や果実酒を仕込むと何が起きるのでしょうか。順を追ってみていきましょう。

まず、果実と酒が出会います。果実と酒が出会うと、酒が果実の中に入り込みます。そして、果実がパンパンに膨らのです。

果実と酒の間で起こっていることは、一言で言うと「酒が果実に浸透する」です。せっかくなので、詳しく見ていきましょう。

ここで大切なキーワードは「半透膜」と「浸透」です。

細胞膜は半透膜

果実は、たくさんの細胞が集まってできています。そして、それぞれの細胞は、細胞膜という皮で包まれています。実はその皮には、小さな穴がたくさん開いているのです。

細胞膜の穴より小さなつぶつぶ(分子やイオン)は、穴を出入りできます。つまり、細胞の中に入ったり、そこから出たり、自由に行き来することができます。一方で、細胞膜の穴より大きなつぶつぶは、通ることができません。

このように、あるきまった大きさの穴が開いており、一定の大きさまでのつぶつぶだけを通す膜を「半透膜」といいます。つまり、細胞膜は半透膜だ、ということです。

半透膜の働きを理解するために、まずはなんでも通る膜=全透膜について考えてみます。

全透膜では拡散が起きる

濃度の違う溶液を、なんでも通る膜=全透膜を挟んで置いておくとどうなるでしょう。

中央の赤い膜が全透膜。穴の大きさが△より大きいので、△が右側に移動し、全体が同じ濃度になる。

下の図では、左側には△がたくさん溶けています。一方、右側にはほとんどありません。この△は全透膜の穴よりも小さいので、左側と右側を自由に行き来することができます。その結果、左側の△が右側に移動し、左右で同じ濃度になるのです。

このように、溶液の中のつぶつぶが自由に動き回り、濃度を均一にしようとする動きを「拡散」といいます。

厳密には左から右(→)、右から左(←)の両方の移動が存在します。ただし今回は、左から右への移動の方が多くあります。そのため、全体でみると左側から右側だけの移動と考えられるのです。

半透膜では拡散は起きない

それでは、半透膜を挟んで、濃度の違う溶液を触れさせるとどうなるでしょうか。

紫色の膜が半透膜。穴の大きさが△より小さいので、△は右側へ移動できない。

半透膜は「あるきまった大きさまでのつぶつぶだけを通す膜」です。今回、△は半透膜の穴よりも大きいです。なので、△が左から右へ移動することはできません。つまり、半透膜の場合、全透膜で見られた拡散は起きないわけです。

それでは、何も起きないのかというと、そうではありません。ここで大切なのは、溶液の「溶かしている側」です。

溶質、溶媒、溶液の確認

溶液とは、溶けているものと溶かしているものからできています。溶けているものは砂糖や塩などで、溶質と呼ばれます。そして、溶かしているものは、水やアルコールなどで、溶媒と呼ばれます。溶質+溶媒=溶液、ということです。

いままでは、溶質、溶けているもの=△にのみ注目してきました。ここからは溶媒、溶かしているもの=●に注目してみます。

半透膜では浸透が起きる

改めて、半透膜を挟んで、濃度の違う溶液が触れあっている場合の話です。

全体を水色で塗っていたが、実際は水色の●の集まり。●は半透膜の穴よりも小さいので、右から左に●が移動し、左右が同じ濃度になる。

溶けているもの△は半透膜を通れません。しかし、溶かしているもの●は半透膜を通ることができます。その結果、●が左から右へ移動し、左右の溶液の濃度が等しくなります。

このように、溶かしているものが半透膜を通り抜けて移動することを「浸透」といいます。つまり、半透膜があると、浸透が起きる。

溶媒は拡散でも移動する

浸透を考えるにあたり、溶媒の移動に注目しました。実は、全透膜を通して拡散するときも、溶媒は左右に移動しています。ただし、全体でみると、左から右、右から左への移動が等しくなります。そのために、溶媒の移動は無視して考えられるのです。

浸透と浸透圧は違う

梅酒の仕組みを検索すると、浸透圧が発生すると書いてあるのをよく見かけます。浸透圧は「浸透を防ぐために高濃度の溶液側に加える圧力」とことです。でも、梅酒づくりで圧力は加えないですよね。梅酒で起きている現象の名前は、浸透です。浸透圧が発生するというのは誤りです。

溶かしているものが右から左に移動したことで、水面の高さに差ができる。左側の水面に力を加えると、左右の水面の高さは同じになる。この力(図の↓)のことを浸透圧という。

果実と酒の間に起ったこと

それでは、果実と酒の間に起ったことをまとめてみましょう。

まず、果実と酒を比較してみます。果実は細胞内に糖を含んでいますが、酒は含んでいない。つまり、果実の方が糖の濃度が大きい状態です。

果実の細胞膜は半透膜です。半透膜の穴は糖の大きさよりも小さいので、糖は穴を通れません。つまり、果実の中の糖が細胞膜を通り、外に出ていくことはありません。

ですが、酒の中のアルコールや水は半透膜の穴よりも小さいです。つまり、細胞膜を通り、酒から果実に移動することができます。

この結果、果実の中に、酒のアルコールや水が浸透するのです。

アルコールや水が半透膜を通って果実の中に浸透することで、果実がパンパンに膨らむ。

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